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2011年8月17日

儚い羊たちの祝宴(米澤穂信)


丹山家の跡取りとして厳格に育てられた吹子にも、大学生になった時に楽しみができた。それは、読書サークル「バベルの会」への参加だった。だが、参加直前になると吹子の身近にいる者が殺害されるという事件が起こり、参加できなくなってしまう。翌年も翌々年も・・・。それらの事件の裏にはいったい何が隠されているのか?「身内に不幸がありまして」を含む5編を収録。

5編どれもが非常に奇異な話だ。いつの間にか読み手さえも、不思議な空間に引きずり込まれていく。人間の恨みや憎しみ、そしてねたみなどの思い・・・。それらが腐敗し、ドロドロとなり渦を巻き、まるで底なし沼のように周りの人間を引きずりこみ、破滅させていく。読んでいて、そういう何とも言えない恐怖を感じた。5編どれもが、「物語の中に張り巡らされた複線が、最後の凝縮された一行で見事に浮かび上がってくる。」という構成になっている。「古典部シリーズ」とはまったく違う作者の別の面が見えて、興味深い。ありきたりの小説に飽きてしまった人には、ぴったりの作品だと思う。

ゆこりん : 20:01 | 作者別・・よねざわほのぶ