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2011年7月13日

凍原(桜木紫乃)


「行方不明になった弟は、今も湿原の中に、土に還ることもできずにいるのだろうか?」
つらい過去を持つ比呂は、警察官となり再び釧路に戻ってきた。弟を飲み込んでしまったかもしれない釧路湿原で、今度は成人男性の遺体が発見される。その事件は、過去に封印されたはずのできごとをしだいに暴いていくことになる・・・。

17年前、当時10歳だった弟が行方不明になった。今も心のどこかで弟を捜し求める比呂。当時捜査をしてくれた片桐は、今は比呂とともに今回の事件の捜査を担当している。弟の友だちだった純も、自分の店を持つほどになっている。月日は流れているのだ。だが、どんなに月日が流れても、絶対に真実をさらせないこともある。永久に封じ込めてしまわなければならない過去が暴かれようとしたとき、悲劇が起こる・・・。さまざまな人間のしがらみがからみ合い、物語に深みを与えている。「こんなに悲しい生き方しかできなかったのか?」と問わずにはいられない切ない描写もあった。けれど、設定や結末には斬新さがなく、感動を与えてくれるまでには至らなかった。全体的にはまあまあの作品だと思うが・・・。

ゆこりん : 15:23 | 作者別・・さ他