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2011年2月17日

つばさものがたり(雫井脩介)


「残された時間で何ができる?」
君川小麦が願ったのは、自分のケーキ屋を持つことだった。家族は心をひとつにし、小麦の願いをかなえるため動き始める。小麦の甥の叶夢にしか見えない「天使」も、小麦を見守り続けるのだが・・・。

店を持ちたいと願う小麦に、母や兄夫婦が手を差しのべる。小麦の悲壮な決意の裏側にある事情を知らない兄嫁の道恵は、厳しすぎる小麦の態度に最初は反発を感じる・・・。誰にも事情を打ち明けず、ひとり悩み苦しむ小麦の姿が痛々しかった。天使が登場するという現実にはありえない設定だが、天使の存在がこの作品をファンタジー的なものにして、あまり暗さを感じないのがよかった。また、家族愛がほのぼのと感じられ、読んでいて心が温まる。「人生、大切なのは長く生きることではない。どれだけ充実した時を過ごすかだ。」そのことをあらためて強く感じた。

ゆこりん : 19:36 | 作者別・・しずくいしゅうすけ