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2011年1月 6日

あるキング(伊坂幸太郎)


仙醍キングス監督南雲慎平太は、彼にとって最後の試合となる日に突然逝った。同じ日、ひとりの男の子が産声を上げる。「王求(おうく)」と名づけられた彼は野球の天才だったが・・・。ひとりの男の、波乱に満ちた人生とは?

この作品を読み終えたとき、さまざまな思いが渦巻いて、王求に語りかけずにはいられなかった。
「王求よ、君の人生は穏やかとは言えないものだったが、それでも幸せだったかい?」
「王求よ、数々の困難が君を襲ったけれども、そのときに君の胸に去来したのはいったい何だったのか?」
「王求よ、野球を続けることにためらいはなかったのかい?」
もっともっと王求に聞きたいことがある。でも、彼は、きっとどんな問いにも笑顔を返すだけなのだろう。そんな気がする。彼の人生を見つめるとき、そこには悲哀しか感じられない。「悲劇の天才」彼にはその名がふさわしい。独特の雰囲気を持った、好き嫌いがはっきり分かれるような作品だが、私は好感を持って読んだ。

ゆこりん : 16:10 | 作者別・・いさかこうたろう