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2010年12月24日

夏目家順路(朝倉かすみ)


夏目清茂が、脳梗塞で突然他界した。彼をよく知る人たち、そして彼の家族が葬儀のため集まってくる。さまざまな人から見た清茂の人間像とは?一人の人間の生きざまを、多角的にとらえた作品。

物語は清茂が自分の過去を回想するところから始まる。そして清茂の死。集まってきた人たちは、清茂と過ごした日々をふり返る。あるひとつのできごとも、人それぞれ受け取り方が微妙に違う。そして、清茂の人物像も、いろいろな人たちがさまざまな角度からとらえている。読んでいくと、だんだんと清茂の立体像が浮かび上がってくる。そんな感じだった。この作品を読んでいると、「自分の生き方について、いったい家族はどんなふうに思っているのか?」と気になってしまう。「どんなに深くつき合っているつもりでも、その人間の本質に迫ることはできない。」そういう思いも強く感じる。だが、人は器用には生きられない。自分の思った道を進むしかないのだ。自分が老いて自分の人生をふり返ったとき何を思うか?そして、まわりの人たちはどう思うのか?そこに現れる自分の人間像は?知りたくもあり、知りたくもなし・・・。読んでいて、さまざまな思いがあふれてくる作品だった。

ゆこりん : 18:44 | 作者別・・あ他