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2010年7月 6日

姫椿(浅田次郎)


事業が行き詰まり死を決意した高木が訪れたのは、20数年前に妻と過ごした懐かしい場所だった。赤い姫椿の花の記憶が、彼に生きる希望を与えた・・・。表題作「姫椿」を含む8編を収録。

ちょっと不思議な話から日常生活の中によくありそうな話まで、実にさまざまな話がちりばめられている・・・。そんな印象だった。どの話にも、傷つき苦悩する人たちが描かれている。特に印象に残ったのは「懈(シエ)」だ。飼い主の鈴子が不幸の涙を流さなくなったときの懈の想いが、とても切なかった。「マダムの喉仏」も、ある人間の凄まじい人生を描いていて衝撃を受けた。絶妙な人間ドラマが繰り広げられ、まあまあ楽しめる作品だと思う。

ゆこりん : 19:18 | 作者別・・あさだじろう