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2009年7月13日

1Q84(村上春樹)


天吾は小松から、「ふかえり」という17歳の少女が書いた「空気さなぎ」の物語を本に仕上げるように依頼される。その内容は天吾の心をとらえ、強く揺さぶった。「空気さなぎ」と「リトルピープル」。このふたつが、まったく関係のないところで生きてきた天吾と青豆とを結ぶ糸になっていく。1984年の世界から1Q84年の世界に足を踏み入れた青豆。望む望まないに関わらず、彼女はしだいに天吾との距離を縮めていくことになるのだが・・・。

この世の中、私たちが存在している世界が確かなものだなんて、いったい誰が言えるだろう。皆が確かなものだと錯覚しているだけかもしれないのに。自分自身についてもそうだ。自分の本質を見失わないように生きているつもりでも、いつの間にかその本質が失われてはいないだろうか。
「空気さなぎ」は、何もないところから新しいものを生み出すものではなく、本来あるべきその人の「本質」を、目に見える形で示すべき手段ではないのか?そして、「空気さなぎ」を作り出す「リトルピープル」は、人の中に存在する「核」のようなものではないのか?
この作品の中では、天吾と青豆の物語が交互に語られている。天吾と青豆、ふたりの思いは同じだった。どんなに離れていようと、置かれている状況がまったく違っても、見つめているものは同じなのだ。その出発点は、10歳の時のできごとにある。それはほんの一瞬のできごとだった。しかし、ふたりのその後の人生を決定づけるには充分な時間だったのだ。天吾と青豆は再会できるのか・・・?
もし、1Q84に3巻目があるとしたら、それは読み手の心の中に作り出される世界に存在するのだと思う。どんな世界になるかは、読み手しだいだ。
読後、さまざまな感情が入り乱れ、さまざまな思いが押し寄せてくるが、それは決して不快なものではなかった。そのあとで心に残るのは、厳粛な感動のみ。果てしない広がりと深さを持つ作品だった。

こんなに感想を書くのが困難な作品は初めてだったかも・・・(汗)。

ゆこりん : 15:46 | コメント (2) | 作者別・・むらかみはるき


コメント

ゆこりんさん、こんばんは。

僕にとっての3巻目、じっくりと模索してみたいと思います。
できれば、希望溢れる物語にしたいです。

投稿者 えいじ : 2009年9月16日 22:15

>えいじさん
私の拙い感想を読んでくださり、ありがとう
ございます。
3巻目があるのではないかと、いろいろな方が
言ってます(^◇^)でも私は、それぞれ読んだ人の
心の中で作り出されるほうがいいと思っています。
村上作品はいつも私を未知の世界へと誘ってくれます。
次回作に期待します(*^▽^*)

投稿者 ゆこりん : 2009年9月17日 13:15