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2009年2月26日

星新一 一〇〇一話をつくった人(最相葉月)


数々の作品を世に送り出し、「ショートショートの神様」とまで言われた星新一。その華々しい活躍の裏に隠された彼の真実とはいったい何だったのか?知られざる星新一の内面を赤裸々に描いた、第29回講談社ノンフィクション賞、第28回日本SF大賞、第34回大佛次郎賞、第61回日本推理作家協会賞評論その他の部門、第39回星雲賞ノンフィクション部門など、数々の賞を受賞した作品。

本を読む人なら誰でも一度くらいは彼の作品を手に取ったことがあるのではないだろうか。発想の面白さ、奇想天外な結末は、多くの人を魅了した。テンポがよく軽快な文章から、星新一自身もきっとそんな性格なのだろうと勝手に思っていた。だが、実際は大きく違った。製薬会社の御曹司でなに不自由なく育った幼年期。父の突然の死により社長になった苦悩の20代。そして、そこから逃れるように書き始めたショートショート。彼が望む望まないに関わらず、「星新一」はSF界の第一人者になっていくのだが・・・。
アイディアが枯渇し「もう書けない。」とつぶやく日々、自分だけおいて行かれるという焦燥の日々を経て、彼はショートショート1000作に向かって突き進んでいく。それは命を削りながらの作業だった。この人はこんなにも苦悩し、傷つきながらショートショートを書いていたのか!
遺された膨大な資料から、最相葉月は見事に「星新一」の実像を描き出している。それは、外見や作品からだけでは決して想像することのできないものだった。一人の人間としての「星新一」がこの作品の中にいる。
読み応えがあるというだけではない。星新一を知ることができる貴重な資料的作品だと思う。オススメです!

ゆこりん : 16:19 | 作者別・・さ他