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2009年2月19日

夢のまた夢(津本陽)


信長亡き後の天下を手中に収めたのは秀吉だった。彼は知力と武力を駆使し、日本の最高権力者となる。日本から世界へ・・・。晩年、秀吉が朝鮮出兵に託した願いとは?吉川英治文学賞受賞作品。

この作品は、本能寺の変以降の秀吉を描いている。仇の明智光秀を討ち、信長時代の主な大名を押さえ込み、天下統一に向かって突き進む秀吉の姿が生き生きと、そして鮮やかに浮かび上がってくる。作者によって描き方の違いはあるけれど、本能寺の変から天下統一までの秀吉についての描写は似たり寄ったりだと思う。この作品が他の作品と違うところは、朝鮮出兵について、かなりのページ数を費やしているところだ。全5巻のうち、2巻近くは朝鮮出兵についてだ。「ここまで書かなくてもいいのではないだろうか。」と、読んでいてうんざりするほど詳しく書かれている。けれど、今まで知らなかった事実も多数あり、興味を惹かれる部分もあった。正直、これほど悲惨で残酷な戦いだとは思わなかった。この戦いで何を得たというのか。結局は、朝鮮の人たちの恨みをかっただけではないだろうか。秀吉の判断力に疑問を感じざるを得ない。
読み応えがあり、今まで読んだ歴史小説とは一味違う作品だった。

ゆこりん : 15:41 | 作者別・・つ他