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2008年8月19日

コールドゲーム(荻原浩)


4年前のいじめに関わった人間が、一人ずつ何者かに襲われていった。とろ吉と呼ばれ、いじめられていた廣吉剛史の存在が浮かび上がる。決して姿を現すことなく復讐を続ける廣吉。彼を追うかつてのクラスメート渡辺光也たちは、やがて驚くべき真実を知ることになる・・・。

いじめていた者たちにとっては過去のできごとだった。「今さらなぜ?」「もうすんでしまったことなのに・・・。」などと思うのは当然かもしれない。だが、いじめられていた者にとっては、いつまでも現在形のままなのだ。思い出すたびに心が血を流す。決して忘れることはない。一人の少年を寄ってたかっていじめる描写は、読んでいて胸が痛い。「何か言えば、今度は自分がいじめの標的になる・・・。」だから、誰も何も言えない。何も言わない。こんな状況は異常としか言いようがない。ひどい話だ。
ラストはある程度予想がついた。だが、それでも衝撃的だった。廣吉一家に平穏な日々が訪れることはもうないのか・・・?苦い思いが残る作品だった。

ゆこりん : 17:20 | 作者別・・おぎわらひろし