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2007年11月23日

いっぽん桜(山本一力)


12歳で丁稚小僧で井筒屋に入って42年。頭取番頭にまでなった長兵衛だったが、息子に家業を譲ることになったあるじから、自分と一緒に店から身を引いてくれるよう、切り出される。突然の言葉に長兵衛は・・・。表題作を含む4編を収録。

「いっぽん桜」のほかに、武士の暮らしを捨て新たな道を歩み始めた男を描いた「萩ゆれて」、人情や親子の情愛を描いた「そこに、すいかずら」、朝顔作りの職人のもとに嫁いだおなつを描いた「芒種のあさがお」が収録されている。この中で一番印象に残ったのは「いっぽん桜」だ。エリートだった人物が突然リストラされた・・・。現代でも珍しくない話だ。いつまでもエリートだったというプライドを捨てきれない長兵衛。新たな勤め先では摩擦が生じるが、人情に触れるうちにだんだんと心を開いていく。一人の男の心の揺らぎや変化を実に細やかに描いている。人の心を開かせるのは、人の心だ。どの話も心にほのぼのとした思いを残す。温かみのある作品だった。

ゆこりん : 15:10 | コメント (2) | トラックバック (1) | 作者別・・やまもといちりき

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花を絡めた、4つの物語。 じんわりと泣ける、江戸の人情物語です。 「いっぽん桜」と「萩ゆれて」が、特に胸に来ました。 大店を守り立ててきた自負のある長兵衛... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年1月27日 12:45


コメント

こんにちは。
ほのぼのという読後感に魅かれて、読んでみました。
ゆこりんさんお奨めの表題作と、
「萩ゆれて」にじんわりとしました。
時代物はちょっぴり苦手なのですが、
人の描写が際立っていて、自然と世界に入り込めました。

素敵な本との出会いをありがとうございます。

投稿者 KOROPPY Author Profile Page : 2008年1月27日 10:22

>KOROPPYさん
こんにちは(*^▽^*)
気に入っていただけてうれしいです♪
私も「いっぽん桜」と「萩ゆれて」が印象的でした。
山本一力さんの作品はどれもほのぼのとした
ものを感じさせます。
私もどちらかというと時代物は苦手なんですが、
山本さんの作品は別です♪(*^▽^*)

投稿者 ゆこりん Author Profile Page : 2008年1月27日 11:34