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2007年10月 3日

ちんぷんかん(畠中恵)


火事の煙を吸い込んだ若だんなの一太郎。気づいたのは三途の川の河原!「死んでしまったのだろうか?」だが、一緒についてきた鳴家まで死なせるわけにはいかない。はたして、現世に戻ってこられるのか?「鬼と子鬼」を含む5編を収録。おなじみの「しゃばけ」シリーズ第6弾。

おなじみの面々に出会うとほっとする。一太郎の体の弱さは相変わらずで、今回は三途の川まで行ってしまった・・・。「鬼と子鬼」の話の中に出てくる三途の川の河原で石を積み上げる子供たちの姿には、ホロリとくるものがあった。また、最後に収められている「はるがいくよ」は、生と死を切なく描いていて、この作品の中で一番印象に残った。誰も、生と死を司ることはできない。寿命の長さで、その人の幸や不幸を測れない。ただおのれの運命に従うのみ。そのことが痛いくらいに伝わってくる。このことで、一太郎もぐっと成長したような気がする。面白いだけではなく、人の命や生と死についてもじっくりと描かれていて、深みのある作品になっていると思う。

ゆこりん : 19:43 | 作者別・・はたけなかめぐみ