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2007年7月13日

夜想(貫井徳郎)


突然の事故で妻子を失った雪籐。彼の落とした定期入れを拾った女性は、物に触れるとそこに籠った思いを感じ取れる不思議な力を持っていた。雪籐は、彼のために泣いてくれたその女性・・・天美遙のために生きようと決意するのだが・・・。

さまざまな理由で救いを求める人がいる。絶望のどん底から誰かが救い上げてくれないか、じっと待っている人がいる。遙の不思議な能力にすがろうとするたくさんの人たちがいても不思議ではない。最初は個人的な好意のボランティアだったものが、有名になりすぎて暴走する。遙が有名になるきっかけを作った雪籐にさえ止めることはできない。遙は、自分が望む望まないにかかわらず、教祖に祀り上げられる。その過程はぞくりとするほど怖い。救いを求める人に手を差し伸べる遙だが、彼女自身の救いを求める心は誰が救ってくれるのか?また、雪籐は本当に救われたのか?最後まで目が離せなかった。「自分を救うのは自分自身しかいない。」この言葉が作品を凝縮したようで、とても印象的だった。

ゆこりん : 16:18 | 作者別・・ぬくいとくろう