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2007年2月26日

いつもの朝に(今邑彩)


画家日向沙羅の描く絵の中にいつもいる顔のない少年。そこには30年前の悲惨な事件が隠されていた。そして、30年の時を超え、その事件は沙羅の2人の息子達に襲いかかる。彼らと過去の事件にはいったいどんなつながりがあるというのだろうか・・・?

父亡きあと、母と2人の息子は仲良く暮らしていた。そしてその日がこれからも続くと信じていた。「いつもの」。その言葉がどんなに大切で貴重なものか!作者は、失おうとしているその言葉を家族が取り戻そうとするさまを、感動的に描こうとしている。また、浮かび上がってくる過去の事件と兄弟との関係にはつらいものがあったが、絆の深さというものを強く感じさせようとしている。けれど、作者の意図はなかなかこちら側には伝わってこなかった。テーマーやストーリー性の重さに比べ、文章が軽すぎる気がした。さらっとし過ぎているというか、上っ面だけをすべっていくような・・・というか、そのアンバランスさがとても気になった。感情移入できないまま読み終えてしまったのが残念だった。

ゆこりん : 16:43 | 作者別・・いまむらあや