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2005年9月 6日

千日紅の恋人(帚木蓬生)


不幸な二度の結婚の後、時子は父が遺したアパート「扇荘」の管理と老人介護施設でのパートをしていた。自分の人生に疑問を持ち始めていたとき、扇荘に一人の男性が引っ越してくる。時子はしだいに彼の存在が気になり始めるが・・・。

前半は、扇荘の住人との間に起こる出来事、時子自身のこと、時子の母のことなどが中心だが、読んでいて退屈な面があった。だが後半は面白かった。扇荘のささやかな日常の中にも、さまざまな悩みや悲しみがある。それを思いやる時子の優しさが心にしみる。時子と有馬の恋愛もよかった。派手さはない。だからこそ読んでいて身近に感じられ、胸を打たれた。ラストでは涙がこぼれた。静かで、穏やかな感じの作品だった。

ゆこりん : 15:31 | 作者別・・ははきぎほうせい