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2004年8月31日

希望(永井するみ)


老女3人を次々に殺害した少年が少年院から出てきた。当時14歳だった熱田友樹は、19歳になっていた。彼が社会に復帰してから、彼の周りで起こる新たな事件。その背後に隠されたものはいったい何だったのか?「犯罪」の意味を問う問題作。

ひとつの犯罪が起こると、まるで連鎖反応のように、悲劇が周りの人たちにも広がっていく。悲しみの果てにあるのは人への憎しみ。それぞれがそれぞれの心に屈折したものを抱え込んでいる。登場人物たちが胸に秘めているものは、あまりに重過ぎる。その重さが逆に、感情移入を妨げているような気がする。途中の展開に比べ、ラストもちょっと不満。真相が分かってもあまり共感できなかった。ただ、犯罪による悲劇はよく描かれていると思った。

ゆこりん : 11:06 | 作者別・・な