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2004年2月17日
晩鐘(乃南アサ)
傷は癒えてはいなかった・・。あの忌まわしい事件から7年。心の傷は年月とともに広がり、深くなっていった。加害者の家族も、そして被害者の家族も、みんな傷ついていた。「風紋」の続編。
17歳の時、母親を殺された高浜真裕子。彼女の心の傷は深い。月日の流れも、傷を癒やす役には立たなかった。一方、加害者松永の家族も哀れだ。松永の子供、大輔と絵里も、この事件の被害者のような気がしてならない。私たちは毎日、新聞で殺人事件の記事を読んでいるが、すぐに忘れてしまう。だが、加害者や被害者の家族の苦しみは、ずっと続いているのだ。ある被害者の家族の言葉。「哀しみや憎しみの後には、恨みが残る。」思わずぞっとした。それが本音なのだろう。しかし、恨みを抱いて生きる人生は、虚しくないのか?だが、そんな虚しい人生しか送れなくなってしまうのが、「事件を起こす」ということなのだ。やりきれなさだけが、心に残った。
ゆこりん : 20:50 | 作者別・・のなみあさ