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2003年7月26日
GOTH(乙一)
殺人事件が好きな少年と、いつも死を考えている少女。二人のまわりで、バラバラ殺人事件、手首だけを切断するリストカット事件など、不思議なそして異常な犯罪が起こる・・。
「なぜこんな作品を書く?」「なぜこんな作品を読ませようと思ったのか?」「なぜこの作品を出版したのか?」読み始めたとき、そう思った。しかし、ここに書かれているような出来事は、実際にこの世の中で起こりうることであり、残虐性は人それぞれの心の中に、大なり小なり存在するものだ。人間の持つ特異性は、決して一部の特別な人間だけのものではない。何気ない平凡な生活を営む人間の中にも潜んでいる。もちろん私の中にも・・。そのことに気づき、視点を変えて読むと、この作品の持つ輝きが見えてくる。目をそむけたくなるような描写の向こうに、作者の真意が見えてくる。