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2003年7月10日

月の裏側(恩田陸)


箭納倉(やなくら)。そこで暮らす人の中に、失踪して、何日かたってから戻ってきた人たちがいた。その人たちには、失踪中の記憶がなかった。毛細血管のように堀が伸びるこの街に、いったい何が起こっているのか?水に潜むものとは?

人類はもとも水の中で生活していた。しかし「何か」から逃げるように地上に上がって、個別の個体として生きてきた。だが、今また「何か」によって、ひとつにさせられようとしている。奇妙な話だけれども、読んでいて惹きつけられる。失踪した人たちは「盗まれる」のだろうか?いや、もしかしたら本来の姿にもどされるだけなのかもしれない。人は人に対し、どこまでその本質をとらえていけばいいのだろう?大きなうねりのような生命の流れの中では、その問いさえも無意味なのかもしれない。

ゆこりん : 11:13 | 作者別・・おんだりく