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2003年5月22日

ガラスの麒麟(加納朋子)


17歳の女子高生が、通り魔に襲われて殺された。彼女が遺したのは1つの童話、「ガラスの麒麟」の話だった・・。殺された少女やそれを取り巻く人たちの心情を、瑞々しい感性で細やかに、連作という形で描いた傑作。日本推理作家協会賞受賞作品。

少女たちはつねに不安定な心を抱えて生きている。どんなに自分が恵まれた環境の中にあっても、心はいつも揺れ動いている。危うい心のバランス、それがほんの少し崩れただけでも、少女たちは深く傷ついてしまうのだ。作者は独特の感性で、さまざまな人物の心の動きを見事に描いている。そして、その描き出された悩み、苦しみ、悲しみは、読者の心と共鳴する。人はなぜ死を願う?人はなぜ生を願う?この二つにいったいどれほどの差があるのだろうか。

ゆこりん : 14:48 | 作者別・・かのうともこ