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2003年4月25日

サヨナライツカ(辻仁成)


仲間たちに光子との婚約の報告をする会で、豊は一人の美しい女性真中沓子を紹介される。やがてこの女性が自分の人生に深くかかわってくるであろうとは、その時夢にも思わなかった。愛し合っていながら、生涯をともにすることなく終わった沓子と豊の、愛の物語。

沓子と豊の初めての結ばれ方が驚き!果たしてこんな女性がいるのだろうか?二人は、豊が結婚するまでという限られた時間の中で、一生分を愛し合う。愛し合っていながら、お互い結婚は望まないし、望めない。別れなければならないと思うから、よけいにいとしさが募る。読んでいても胸が苦しくなる。この二人は出会うべきではなかった。そうすればお互いにもっと違う人生があったはずだ。夫の心の中に常に「沓子」という女性がいることを知らない光子も、あわれと言えばあわれだ。「さよなら」だけでは悲しすぎる。いつか「こんにちは」がやって来る。「サヨナライツカ」・・。沓子もその言葉を信じて生きていたのだろうか。命を終えるとき、愛した人のことを思っていたのだろうか。切ない思いが残った。

ゆこりん : 15:17 | 作者別・・つじひとなり