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2001年9月29日

「死の医学」への序章(柳田邦男)

もしもある日限られた命だと知ってしまったなら、果たして自分ならどうするだろう。取り乱し、泣きわめき、自暴自棄になってしまうのか?それとも精一杯生きようと努力するのか?この作品は、死を宣告された医師の壮絶なまでの生き様を克明に記録した作品です。

医師として今までやってきたことを彼は本にまとめ、後生に伝えようとします。それは、通常の仕事、講演活動など様々なスケジュ-ルの合間をぬっての作業でした。彼は患者になってみて初めて患者の心理状態を知りました。死に臨む患者に医師としてどう接すればいいのか、両方の立場を理解できる彼だからこそ、そのことをどうしても記録せずにはいられませんでした。最後は、時間との戦いでした。残された時間を限界までがんばり続けた彼の生きる事への情熱には、とても感動しました。人はどう自分の死を迎えるべきか?とても難しいことですが、誰もがそのことから逃れることはできません。彼の生き方は、きっと読む者に何かを教えてくれるでしょう。読んだ後、死生観が少し変わったような気がします。

ゆこりん : 16:10 | 作者別・・や他